俺の名前は山田 太郎(やまだ たろう)。
とある事情で就職も進学も決まらなかったが、昨日卒業式を迎えたばかりの18歳である。
卒業式が終わった次の日・・・・俺の部屋に12人の女の子が集まった。
いや、集まったというより押しかけてきた。
別に彼女達が全員俺の妹だったりなどという展開ならばいい…良くはないのだが救いがあり、これの名前がシ○プリにかわるだけだから…だがそんなほのぼのという雰囲気ではなく。
日本全国、津々浦々。
彼女達の出身は北は北海道、南は長崎まで選り取りみどり……俺には選ぶ事は出来ないのだが。
進退ここに窮まれり……いわゆる一つの修羅場というやつであり。
俺を囲むように押し殺すような威圧感を発する彼女達のド真ん中で、気が遠くなり始めた俺は―――この始まりを…一通の手紙の事を思い出す事しか出来なくて。
そう―――1年前のあの日に届いた手紙が全ての始まりだった。
それは一通の手紙から始まって
一日目 届いた手紙は旅へと誘う物
【1年前・4月1日・自宅前玄関】
その手紙を俺がを見つけたのは、ほんの偶然だった。
その日が始業式ではなくて家に早く帰ってきていなかったら…
友人に誘われたカラオケを断わらずに付き合っていたら…
郵便局の人が家の郵便受けに手紙を入れる所を見なかったら…
仮定でしかない、IF、もしもの世界。
そして事態は動き始めた。
『あなたに会いたい』その一言だけ書かれた手紙を自宅の郵便受けから取り出した俺は戦慄と寒気を覚えた。
事実@ 名前が俺宛=俺の事を知っている。
事実A 消印どころか切手を貼っていないことから直接家に届にきた。
事実B 差出人はおろか住所もかかれていない。
事実C 女の字である。
30秒ほど思考時間に要し、たどり着いた結論は――――
――――ストーカーだっ!!!
判断時間は3秒。
その日から俺の周囲に気をつけながらの生活が始まった。
ゴルゴ13のように周囲と背後に気を配り、用心する毎日。
それから1週間は何もなかったんだ……そう、1週間は。
【1週間後・居間】
今日は日曜日……天気はいい、ストーカーの脅威は去った?、口うるさい親は留守…年頃の男にとってこれほどリラックスできる環境はそれほど多くない。
事実、俺はくつろぎモードでまったりと……
プルルルルルルルル・・・・・・・
一本の電話が。
ガチャ
「はい、山田です。」
『・・・・・・・・・・・・・・』
「もしもし?」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
来ましたよ!?無言電話が。
ガチャり…
この日から、俺の過去を探る旅が始まった。
この旅が今日のこの現状を引き起こす原因だったとは、誰もわかっちゃいなかった。
理不尽な『修羅場』というこの状況を。
沢渡ほのか、山本るりか、永倉えみる、安達妙子、森井夏穂、綾崎若菜、杉原真奈美、七瀬優、保坂美由紀、遠藤晶、松岡千恵、星野明日香・・・・
俺の記憶の中に薄く残る過去が……手紙を出した人間がこの中にいるということを告げていた。
決着をつけねばなるまい。
その日から俺の趣味は旅になった。